2016年07月14日

外来語対古語

片蔭のデジャビュの辻を曲がりけり 朝日俳壇選一席

フランス語のデジャビュとは未体験の事柄であるはずが、
過去にどこかで体験したことがあるかのような
感覚を覚えること。
日本語の既視感である。

大学生への調査では72%が経験があると答えた。
訪れた経験のない浅草のある曲がり角を
どうしても過去に見た気がして作った。
片蔭は夏の季語で、
夏は影を選んで歩くことから派生した。
この句のポイントはデジャビュウという洒落た外来語に
「辻」という古い余韻のある言葉を合わせたこと。
「角」では絶対に入選しなかったであろう。
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2016年07月13日

台所俳句

玉葱に涙などして暮らしゐる    産経俳壇1席
 
男といえども退職すれば厨房に入ることも多い。
時には本格的な料理にも手を出す。
従って台所は句作の材料に事欠かないのだ。

掲句はタマネギを切って涙が出たのをとらえた。
中村汀女(なかむらていじょ)の句に

秋雨の瓦斯(ガス)が飛びつく燐寸(マッチ)かな

がある。

マッチの火にガスが「飛びつく」と表現できるのは
並大抵の力量ではない。
皆飛び付くのは分かっていても、
表現に結びつかないのだ。

季語を秋雨と置いて、
昔の薄暗い台所の情景を思い起こさせる。
男子厨房に入り大いに俳句を作るべし。
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2016年07月12日

選句能力

遠足のパンパカパーンと弁当開け 読売俳壇1席
 
句会などではこれほどの句を
どうして採らないのかと首を傾げることが多い。
掲句の元句は
<地震(ない)の子にパンパカパーンと花開く>
であったが、
1票しか入らなかった。

選句能力のある人の1票だった。
他は中七の「パンパカパーン」に抵抗があったのだ。
筆者も冒険だとは思ったが
あえて投句してみたが案の定であった。

それではとあちこちの新聞に「パンパカパーン句」を投句した。
そうしたら読売が1席で採ってくれた。

芭蕉の
<古池やかわず飛び込む水の音>
すら修正しようとした弟子がいた。
宝井其角にが、
「山吹や」がいいのではないかと主張したという。
名句が一挙に駄句になる。
 
近くの森で遠足の子供たちと出会った。
「おはようございますと」礼儀正しかった。
150人くらいの行列だった。
日本にもまだいっぱい子どもがいるとおもうと、
元気が出た。
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2016年07月07日

記憶から引きだす句

金魚屋を漁師ら囲み秋祭り    読売俳壇1席

港町の秋祭りで屈強な漁師らが
金魚屋を囲み冷やかしている場面に出会った。
金魚屋も冗談を言って混ぜ返す。
極めて印象的で忘れられない風景であった。
何と40年前の風景である。
それがふと脳裏によみがえって俳句となった。

俳句は眼前のものを観察して詠めと、
偉い俳人はおっしゃるが網膜写真に残った風景で十分であると言いたい。
人間馬齢を重ねても、
大事な風景は脳裏に刻まれている。
年を取ると言うことはそれが強みだ。

これきしはジュラ紀の冬と炎天下    読売俳壇3席

恐竜の天下であったジュラ紀の平均気温は
現在より10度以上も高かったと考えられている。
北極圏でも平均気温は15度くらいあった。
掲句は記者時代小生が、
夏の背広を買うカネがないから冬の背広を着て
「何だってんだい。これくれいはジュラ紀の冬だ」と
炎天下を取材に歩いている姿である。

深い科学的な知識(?)に裏付けられた俳句も時には詠むのだ。
人の意表を突く意外性と機知がポイントだ。
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2016年07月06日

二物衝撃の句

真夜中の天井裏に青大将   毎日俳談入選

意外な二物の取り合わせの句を二物衝撃句という。
真夜中の天井裏とネズミでは日常的。
しかし天井裏と青大将となるとゾクゾクとする恐怖感をもたらす。
そしてよく考えてやっと旧家には青大将が住みついていることに考えが至る。

露人ワシコフ叫びて石榴打ち落す   西東三鬼

妻を亡くした隣人のロシア人が、
長いサオを持ち出し叫び声と共に
手当り次第にザクロをたたき落していたのを三鬼が描写したものだ。
事情を知らない読者は
ロシア人と石榴の取り合わせの意外感から、
様々な空想の世界へといざなわれる。
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